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『俺、タクヤ・ウィリアム。よろしくな。』


そう言って差し出された手は、
今まで見てきた男の子の中で一番がっしりしていて
大きくて、力強かった。

『いつか俺がを捕まえてやるから、覚悟しとけよ』


そんな事を言われたのはいつだったか。
最初はその言葉の意味がわからなかった。
それと同時に、彼は常に自分の傍にいて
何時も、何時も私を見てた。


『好きだ』

言葉にされたのは入学してから
三年目のハロウィンの夜だった。
その頃、私には好きな先輩がいたし
彼の事はただのいい友達としてしかとらえられなくて
答は



―――― No.



普通は振られた相手とは元のようにはいかない。
仮令、振った相手が元の仲に戻りたいと思っても。

それでも彼は、もとのように傍にいた。


正直に言って彼は人気があった。

成績は良いし、鼻筋の通って切れ長な目。
明るくて優しい性格。
スポーツも出来たし先生受けも良くて
何人もの生徒から告白を受けていた。
そんな彼が、どうして私なんかに興味を持ったのかも解らず
不思議に思う日々ばかりを送っていた。




やがて季節は巡り、
ずっと想いを寄せていた先輩は卒業をしていき、
その先輩に対しての想いは甘酸っぱい想い出に変わった。
六年生の冬のことだった。



そして、その年のクリスマスパーティーで
スリザリンの女生徒数名から嫌がらせを受けている時に
彼、タクヤが助けてくれた。


タクヤは、いつもふざけて、
おちゃらけた所しか見せないのに
スリザリンの女生徒達を前にしたときの表情は違った。

を傷つけるな。』
『女だからって容赦しねぇからな』

怖い顔。
怖いというより、何かを守る人の顔。


その顔を見てから、自分の中で何かが変わった。
タクヤを一人の“男”としてみるようになった。

心の奥が、先輩に恋をしていた時と同じ気持ちになった。







六年の最後の日。
タクヤに呼び出されて展望台に向った。


星の綺麗な夜だった。






彼は、真直ぐ私を見詰めて
緊張した面持ちで静に口を開いた。


『好きだ』


前に聞かされた言葉とは明らかに違う重み。
心の奥にすんなりと入ってくる自然な重さ。




答は決っていた。




私もあなたが好きです。















休み中はお互いに連絡を取り合った。
梟を飛ばしてみたり
電話をしてみたり。

家が遠くてなかなか合う機会が無かったけれど
新学期に供える為の買い物をする時はいっしょに出かけた。

彼は私の分の荷物まで持ってくれた。

優しい人。

幸せで、幸せで。
初めてのことばかりで何も知らない私を気遣ってくれた。



初めてのキスは、図書室の本棚の間にある
狭い読書スペースの中だった。
共に課題を終らせる為に本を沢山持ち込み
解らない所を互いに教えあって
時には笑いあう。

そんな時、目が合って。

とても、優しいキスをしてくれた。







彼が、大好きになった。



優しい瞳や
大きな手。
少し前を行く大きな背中。
全てにおいて私を優しく包み込んでくれる存在。




どうしてもっと早く彼の魅力に気付かなかったんだろう?



“好き”になってから、
想いは止まる事を知らずどんどん膨張していった。





まだ付き合ってからそんなに時間は経っていないけど
心の中を彼が占めるまではそんなに時間はかからなかった。



だから、私もできる限りの返し方をしてたし、
ずっと彼の傍にいようと決めていた。
彼も、同じ事を思ってくれてるんだろうな、って
そんな風に思ってた。













あのシーンを見るまでは。















沢山の課題を抱えて図書室に本を探しに行った。
鞄を適当な机に置くと、本を探しに歩いた。
初めに行った所には関連した本は無くて、
もっと奥、そう閲覧禁止の本棚があって
私と彼の初めてのキスをした場所の近くに足を運んだ。


その時、話し声が聞こえた。

微かな物だから良く聞こえなかったけど、
その事に関してはあまり気にとめなかった。

そしてお目当ての本を見つけて引っ張り出すと、
大量の埃が降ってきて思わずむせた。
その本の取り出した所から、その場所が見えることに気付いた。
覗き見るつもりは全く無かった。
何かの反動で視線が其処を捕らえてしまうまでは。



「・・・・・え・・」



その、初めてのキスをした思い出の場所で
2人の男女が居た。


ブラウンのストレートな髪の毛。
やや身長の高い、ネクタイがグリフィンドールの少年と
漆黒に近い髪の毛の色で、顔がすこし幼く
ネクタイがハッフルパフの少女。




幸せそうに肩を寄せ合い、
幸せそうに話をしていた。





そして、ゆっくりと唇が重なった。















心臓がバクバクと大きな音をたてて
苦しくてその場に居られなかった。

咄嗟に口元を抑えて声を喉に詰まらせてその場から逃げるように
寮へ戻った。







部屋に駆け込むと、一気に力が抜ける。
足元から暗闇に飲み込まれたみたいな感覚だ。




泪が溢れて止まらない。
心がずっと痛い。




あの場所で見た二人は良く知ってる二人だった。

一人は自分の可愛い後輩。
もう一人は


もう一人は自分の恋人。




「・・・タクヤ・・・」




その名前を口にするだけで胸の奥が熱くなったのに
今ではその名前を口にするだけでも心が引き裂かれたように痛む。








私はその日からタクヤを避けるようになった。