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カーテンを開けると、其処からは
とてもすがすがしい朝陽が入り込んできた。
穢れを知らない、真っ白な朝陽。


今の汚い感情をもった自分とは正反対の光。


はカーテンを握り締めたまま、
太陽が輝くその場所を見つめていた。
禁じられた森の木々が、神秘的に見える。
ハグリッドの住んでいる小屋の辺りも薄く霧がかかっていて綺麗だ。


もうすぐ、あの小屋からハグリッドが大きな身体を揺らして出てくる。
自分の世話している奇怪な動物達に朝食をあげるために。




は視線を落とすと踵を返して着替えを始めた。







教科書や羊皮紙を詰め込んだカバンを持って
部屋を出ようとする。
ドアノブに手をかけた瞬間、不図疑問が頭をよぎった。





私は、彼の傍に行っても良いのだろうか。
彼の前で、笑えるのだろうか。
彼に、見た事を問いただす事はできるのだろうか。





部屋を出る事を躊躇した。
ドアノブを掴んだ手に視線を落として意識が遠くなる。
考える事が面倒だ。
休んでしまいたい。




「・・・ん」





ぼんやりとしてしまっていたその時
同室の誰かが発した声(恐らく目がさめたのだろう)
でハッと我に返る。




逃げてはいけない。


は軽く冠りを振るとドアノブを押して部屋から出た。













談話室に下りると、其処にはまだ誰も居なかった。
恐らく、今日一番乗りなのは自分なんだろう。
きっともうすぐ人が降りてきて
何時ものように騒がしくなるんだろう。


大広間に行って早い朝食を取ってしまおうか。


きっと今行けば人はかなり少ない。
もしかしたら自分だけかも。
それは其れでいい。

今は、静かな所に一人でいたい。



あぁ、だけど。
きっと先に行けば彼はどうして先に行ったのかとか
そういう質問をしてくるに違いない。

カタチだけでも付き合っているから。


だけど、私は・・・・






其処まで考えて、面倒になった。
は小さく溜息をつくと
朝陽が入り込む談話室を後にし、大広間へ向った。



大広間に入ると、予想した通り人は少なかった。


スリザリンの席には若干人は居たが、
あとはレイヴンクローの席に、少し暗そうな感じの子が
二,三人座って朝食をとっているだけだった。



はまだ誰も座っていないグリフィンドールのテーブルにつくと
カバンを自分の横においてその中からマグル学の教科書をつかみ出して
テーブルに置いた。
そのときにはもう、の目の前には数種類の朝食が用意されていて、
その中からトーストとサラダとオレンジジュースを取り、
一人、朝食を取り始めた。




朝食を取りながら教科書を読む。
今日は確か小テストをやる、というようなことを言っていた。
此処で赤点を取ったら補習とやらで
先生にお呼び出しになる。
そういうのは面倒だ。


挿絵の入ったページを捲ると、
は最後のパンの欠片を口に放り込む。




それを飲み下すと、空いた皿を下げて
オレンジジュースを口に運んだ。






しばらく静寂が訪れる。
大広間には、スリザリン生が言葉少なげに会話する
小さなささやき声しかしない。



時折が捲る紙が擦れる音が其処に仲間入りして。
その音もすぐに静寂に飲み込まれていく。










その中に居ると、どうしても考える事が一つになってしまう。
集中して教科書を読まなければならないのに。
解っているのに。
だけど、気付けば視線は教科書の文章を追っていなくて。
ある考えがそれを止めて、また意識が奪われる。




このままではダメだ。






はきつく目を閉じた。









「おはよう、


その声に身体がビクッと動いた。


いきなりでもあった。
だけど、其れではない。

声の持ち主が、






「・・・おはよう・・・タクヤ」






彼女の恋人だったのだ。









タクヤは微笑むとの隣に座る。
そしてすぐさま現れた朝食を取り、
口へ運んでいった。


は早鐘のように打つ心臓が苦しくて
教科書に視線を戻す。




「今日どうして先に行ったんだ?俺ずっと談話室で待ってたんだぞ」




オートミールを飲み下したタクヤが声をだした。
それは明らかに不機嫌な声だった。


視線を向けることが出来ない。


は苦しいのを堪えて笑顔を見せた。




「今日マグル学の小テストがあるの。だから先にきちゃって・・ゴメンね」

「そうか・・・大変だな」





がそう言うと
タクヤは不機嫌だった顔を緩めた。


その小さな微笑に、胸が苦しくなる。




苦しいのを何とかしたくて
はそのまま視線をハッフルパフのテーブルにそっと向けた。
其処には、アンナがいて。
彼女は一人で朝食を取っていた。


そして、彼女は此方を見ていた。




ズキン、と胸が痛くなる。









ねぇ、待ってたなんてうそなんでしょ?
アンナと一緒に居たんでしょ?








「タクヤ・・」



は視線をタクヤのほうへ戻した。
の声に、タクヤは再びへ視線を向ける。






私に、聞けるだろうか。
アンナとどんな関係なのか。
聞いたら、どうなる?
私は、どうしたらいい?




ねぇ、苦しいの。

解っている?







「・・・今日も頑張ろうね」

「・・・?おう」





タクヤは首をかしげると、ニッコリと笑って
また一口オートミールを口へ運んだ。



は聞けなかった。
聞いたらどうなるか、もう解ってしまっていたから。
それと同時に淡い期待も抱いていた。


何かの見間違いで、
タクヤは自分を想っていてくれる と。


この思いを壊したくは無かった。







タクヤは、視線をそらした所為で気付いていないが
は悲痛な表情を浮べていた。

まるで、泣き出してしまいそうな、そんな表情。





張り裂けそうな不安が大きくなって。




だけど、私はまだ、この人の手を放したくは無いと思った。
仮令偽りでも。
まだ、自分の居場所は此処なんだと

思って居たい。






ねぇ、アレは、私の見間違いなんでしょう?