| どくどくと心臓が暴れて変な汗がじわりと背中を伝った。誰もいない校舎、冬、寒い、暗い(こわ、い)ぎゅっとセーラーのリボンの結び目を握り締めてその場にうずくまった。どうしてこんな事になってしまったのか、半分パニックに陥っている頭で考えた。そう、いつもの様に仕事を手伝って欲しいと頼まれたからで、わたしはいつものように生徒会室へ、そしていつものように数人で仕事をして (途中から、二人きり) いつもなら最後まで一緒に仕事をするのに、その日に限って選管の委員長は早々と帰ってしまって空がオレンジ色から黒くなっていくまでわたしは手塚君と二人きりになってしまった。静かな空間、カリカリとシャープが紙の上を走る音、時計の秒針の音。息の詰まりそうな空間でわたしは必死に仕事を片付けていた。手塚君も手元の資料を全てまとめていって。途中、わたしはずっと疑問に思っていたことをくちにして。それから、だ。 (「どうしてわたしに仕事を手伝わせるの?」) わたしは手塚君とは違うクラスで、マネージャーでもなくて、生徒会の役員とかやってるわけでもなくて。ただ、乾とわたしはクラスメイトで隣の席で。手塚君とは、乾を通して会話する事が多かった。(いつから、)だから初めて仕事を手伝えと言われたときは何の接点もないわたしになぜ頼むのか不思議だったけれど手塚は乾と友達のお前は頼み易いと言って。わたしはあまり深く考えなかったけど、そのときに気づくべきだったんだ(遅すぎるよ) 突然の雨、激しく降り付けて窓に喧しく体当たりをする。わたしは集中力を欠いて、雨に、窓に目を向けた。そして窓に近づいて外を眺める。もう冬なのに、雨。雪ではなく、どしゃぶりの。 「凄い雨…傘あるかな」 「…、」 「あ、ごめん、もうすぐ終わるから」 仕事を途中に、窓際に寄って行ったわたしを手塚君は仕事に引き戻そうとした(んだと、思う)いそいそと仕事に戻り、最後の空欄に今日の日付を書き入れる。仕事はそれで本当に終わりだった。だからわたしは帰るために椅子から立ち上がって、自分の教室に戻ろうとした。 不意の、停電。 急に真っ暗になった教室、わたしは突然の事に驚いて身を硬くした。だだっ広い校舎に一人取り残されるのが怖くて、教室から一歩踏み出した足を再び室内に戻して、微かに明るい窓を見ようと、した。 「…!手塚君…」 目の前に行き成り現れた影。室内にいた手塚君だった。何の音も、気配もなくて背後に立たれていたのだ。びっくりした。心臓が一瞬跳ね上がって、体がびくっとする。幽霊かと思った(本当に) 「…」 手塚君の声が、すぐ耳元で聞こえて、さらに体がかたくなった。驚きに目を見開く。暗くて手塚君のシルエットしか見えないけれど。手塚君が、わたしの名前を呼んだ。同時に、凄く近いのだと知る。何故か心臓がゴトゴトと嫌な動きをはじめて、脳がサイレンを鳴らし始めた。手塚君のシルエットが動いて、何か長いもの、がわたしにむかって伸びてその行動が何故か酷くゆっくりでそれが手塚君の腕だと気づいた時全ては遅かった。 光った空、見開いたわたしの目、手塚君の顔 ドーンと凄まじい音が聞こえて、雷が何処かに落ちたことを知った。それどころじゃない、わたしの体を拘束するのが手塚君の腕で、あまりの力の強さにわたしの身体はぎちぎちと悲鳴を上げた。苦しい、はんぱじゃない苦しさにわたしは手塚君の胸を押し返したそれでもビクともしない身体。塞がれた口からはわたしの悲鳴とか全部、手塚君に吸い取られて、変な息しか出ない。手塚君の片腕がわたしを締め付け、そしてもう片方の手が荒々しくスカートをまくり上げて足に手が触れた瞬間わたしは心臓が飛び出るんじゃないかと思うほど吃驚して、同時に手塚君を突き飛ばしていた。火事場の馬鹿力って奴だろうか、とにかくわたしは必死になってそこから逃げた。 静か過ぎる学校、わたしは恐怖のあまりがむしゃらに走った。今まで手塚君とは事務的な会話しかなくて、どうしてそれなのに、あんな。怖すぎて涙すら出ない(本当に冗談じゃない、怖いよ) わたしは身体を丸めて、逃げ込んだ部屋の奥でガタガタと震えた。 雨も怖い、雷も。真っ暗な校舎、誰もいない。怖い。ぎゅっと目を閉じてゴトゴトと煩い心臓に身体が震える。 ガラガラと教室の扉が開く。わたしは顔を上げた。その影はわたしを見ると一歩一歩近づいてくる 怖いこないで、震えて麻痺した身体は言うことを聞かない。金縛りにあったように動かなくて目だけがその影をしっかり見ている。空が光った。闇に浮かんだ手塚君の顔。狂気だ、思った。 手塚君の腕がわたしの身体を拘束する。わたしはもう逃げる力が残っていなかった。もしあの時、仕事を終えて早く帰っていたなら。わたしの思考はそこで止まってしまった。手塚君の熱い吐息がわたしの鼓膜を刺激する もう、逃げられない 「捕まえた」
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(彼の吐息はわたしの狂気を煽いで、)